国内初、シアリスのED治療薬が市販化へ – その意義と購入方法
2025年9月、日本のED(勃起不全)治療に歴史的な転換点となる決定がなされました。厚生労働省の専門部会において、ED治療薬「シアリス」(一般名タダラフィル)の市販化が了承されたのですこれにより、国内で初めて処方箋なしで購入できるED治療薬が誕生する見通しとなりました本記事では、泌尿器科専門医である当院院長の視点から、市販化の背景と意義、具体的な購入方法や注意点、そして市販後もクリニック・オンライン診療を利用するメリットについて詳しく解説します。
シアリスのOTC(一般用医薬品)承認と「要指導医薬品」とは
まず押さえておきたいのは、今回市販化が了承されたシアリスは**「要指導医薬品」に指定される予定である点です。要指導医薬品とは、処方箋なしで購入できる市販薬(OTC)の中でも、とりわけ安全管理に注意が必要なカテゴリーです。購入時には薬剤師による対面での情報提供・指導**が法律で義務付けられており、購入者(18歳以上の本人)に対して正しい服用方法や副作用、併用禁忌(飲み合わせが禁止される薬)などについて丁寧な説明が行われます。これはED治療薬の適正使用のために不可欠なプロセスです。
シアリス10mg錠がOTC化される今回のケースでも、効果や用量は医療用と同じですが薬局の店頭で気軽に買える一般的な風邪薬とは異なり、購入には薬剤師との対面相談が必要になります。裏を返せば、処方箋がなくても薬剤師のチェックのもと安全に入手できるようになるということです。
市販薬はいつから買えるのか?発売時期の見通し
「了承されたならすぐにでも買えるのか?」と期待する声もありますが、実際の発売開始にはもう少し時間がかかる見込みです。専門部会で了承後、正式な手続きとして厚生労働大臣による承認や、製造販売の準備が必要です。そのため、2025年内に即発売という訳ではなく、早くとも2026年以降になる可能性が高いと考えられます。現時点(2025年10月)で具体的な発売日は公表されていませんが、今後エスエス製薬(販売元)からの公式発表に注目する必要があります。
一方、法制度の面では興味深い動きがあります。改正医薬品医療機器等法(薬機法)の施行により、2026年5月以降は要指導医薬品についても薬剤師がオンライン上で情報提供(オンライン服薬指導)を行った上でのインターネット販売が可能になる見込みです。今回のシアリス市販薬がその対象に含まれるかは最終的な行政判断によりますが、将来的にはオンラインで購入・郵送といった選択肢も開かれるかもしれません。
市販化の背景 – 増える潜在患者と偽造薬の問題
シアリス市販化の決定に至った背景には、日本のED医療を取り巻く2つの社会的課題があります。
1つ目の課題は、治療を受けていないED患者の多さです。日本におけるEDの有病率は約30%とされ、成人男性の約3人に1人、推計で1,400万人もの男性がEDに悩んでいるという調査結果があります。これは日本性機能学会が2023年に25年ぶりに実施した全国調査による数字です。ところが、その大多数が恥ずかしさなどから医療機関を受診していないのが現状です。実際、同調査でも「悩んでいても治療を受けたことがある人は少ない」ことが指摘されており、EDはその治療率が低い疾患の一つなのです。市販化により、こうした受診のハードルを下げ正規の薬にアクセスしやすくすることが期待されています。
2つ目の課題は、個人輸入による偽造ED薬の横行です。医師の処方を避けてインターネット通販や個人輸入代行でED薬を手に入れようとするケースが後を絶ちません。しかし、海外から個人輸入されたED薬には高率で偽物が含まれている実態があります。厚労省の研究班が行った調査では、個人輸入されたシアリスの実に71%が模造品だったとの結果が報告されています。。また、国内外の製薬企業4社の合同調査でも、ネットで購入されたED薬の約4割が偽物だったとのデータがあります。偽造品には有効成分が全く含まれていなかったり、逆に過剰に含まれていたり、不純物が混入しているケースもあり、健康被害のリスクが指摘されています。実際に偽造ED薬による健康被害例も報告されており、安全性確保が大きな課題でした。正規品の市販化は、こうした偽造薬の流通に歯止めをかけ、患者さんが安全な薬を入手できる経路を増やす一歩となるでしょう。
以上のように、「受診控えによる未治療患者の多さ」と「偽造薬の蔓延」という課題に対応すべく、慎重な議論を経て今回の市販化決定に至ったのです。
市販ED治療薬の購入方法【完全ガイド】
では、いざ市販版シアリスが発売開始となった場合、どのように購入すればよいか具体的な流れを確認しておきましょう。初めて薬局でED薬を買うとなると、「店頭でED薬をくださいと言うのは抵抗がある」「特別な手続きや書類が必要では?」など不安に思う方もいるでしょう。ここではステップごとに購入の仕方を解説します。
ステップ1:薬局へ行く前の準備
本人確認書類の用意: 市販されるシアリスは18歳以上の成人男性本人しか購入できません。薬剤師は購入者が18歳以上であることを確認する義務があります。そのため、運転免許証やマイナンバーカード等の身分証を念のため持参しましょう。法律上「必ず提示」とまでは決まっていませんが、現場では年齢確認が求められる可能性があります。スムーズに購入するためにも準備しておくことをお勧めします。
現在服用中の薬の情報: もし他に常用薬がある場合は、その情報がわかるお薬手帳や薬の名前をメモしたものを持って行きましょう。後述する薬剤師からの質問で「併用中の薬」が確認されます。特に狭心症の治療薬(ニトログリセリンなどの硝酸剤)や肺高血圧症の治療薬(リオシグアトなど)を使用中の場合、シアリスとの併用は禁止です。このような重要情報を正確に伝えるためにも、手帳類があると便利です。
ステップ2:薬剤師による対面でのチェックと相談
薬局に着いたら、調剤カウンターで「ED治療薬の購入希望」である旨を伝えます。要指導医薬品であるシアリスを販売するにあたり、薬剤師は厚生労働省が策定したチェックリストに基づいて、購入者が安全に服用できるか確認します。
具体的には以下のような質問が想定されます。
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ED症状の有無や程度: 自覚症状として勃起の維持が困難かどうか。
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持病や既往歴: 心臓病(狭心症・心筋梗塞の既往)、脳卒中の既往、高血圧・低血圧、重度の肝疾患や腎疾患がないか。これらの疾患がある場合、シアリス服用は注意または禁止となります。
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併用薬の確認: 前述の硝酸剤やリオシグアトなど併用禁忌薬を使っていないか。また他に血圧の薬など注意が必要な薬を飲んでいないか。
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アレルギー歴など: 薬剤に対する過去のアレルギー反応の有無。
これらは適正使用ガイドラインに沿った質問で、決して意地悪な詮索ではありません。安全のために必要な確認事項です。万一、確認の結果「医師の診察が必要」と判断された場合には、その場での販売は見送りになり、医療機関への受診を勧められることもあります。それは裏を返せば、市販薬といえど自己判断だけに頼らず専門家が関与する仕組みが整っているということです。安心して薬剤師と相談しながら購入してください。
ステップ3:現時点では店頭販売のみ(将来のオンライン購入は?)
発売当初は、シアリス市販薬は店頭での対面販売のみとなります。インターネット通販でポチっと買うことはできません。ただし前述したように2026年以降、条件付きでオンライン販売が解禁される可能性があります。具体的には、薬剤師がビデオ通話等で服薬指導を行い、問題がなければオンラインで注文・決済→自宅へ配送という流れも検討されています。
とはいえ、要指導医薬品すべてがオンラインOKになるわけではありません。安全面から「やはり直接顔を合わせて確認すべき」と指定される品目は、引き続き対面販売が義務付けられます。ED治療薬シアリスについてオンライン解禁されるかは今後の厚労省の指定次第です。最新情報を注視しましょう。
市販薬を使う前に知っておきたい重要ポイント
市販化により、ED治療薬が従来より入手しやすくなるのは朗報です。しかし、「手軽に買える」からこそ注意すべき点もあります。自己判断で薬を始める前に、以下のポイントをぜひ押さえてください。
1. EDは重大疾患のサインかもしれない
EDは単なる加齢現象やメンタルの問題だけではありません。実は心血管疾患のリスクマーカーとして位置づけられています。陰茎の血管は心臓の冠動脈より細いため、動脈硬化の影響が先にEDとして現れる場合があります。EDを発症してから約3年後に狭心症や心筋梗塞が発症するケースもあるとの報告があり、将来の心血管イベントの前兆となり得るのです。さらに、EDの背景には糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が隠れていることも少なくありません。
市販薬で症状だけ改善すると、こうした根本原因の病気が見逃されてしまうリスクがあります。EDは身体からの「何か異常がある」というメッセージでもあるのです。当院院長を務める泌尿器科専門医の立場から言わせていただくと、薬の効果に頼るだけでなく、一度は医師の診察を受けて全身の健康チェックをすることを強くお勧めします。市販薬で対処しつつも、定期的な健康診断や必要なら循環器内科への相談も検討してください。
2. 市販薬と処方薬、どちらを選ぶ? – 価格や選択肢の違い
価格面: ED治療薬は自由診療(保険適用外)のため、処方薬でも費用は全額自己負担です。市販薬の価格は記事執筆時点では未定ですが、一般論として市販薬は処方薬より高めに設定される傾向があります。例えば、現在クリニックで処方されるシアリス(先発品)10mgは1錠あたり約1,500~2,000円、ジェネリックのタダラフィル錠なら1,000~1,500円程度が相場(当院ではタダラフィル20mg1190円)です。当院を含め多くの医療機関ではジェネリックも取り扱っており、同じ効果で費用を抑えられるメリットがあります。今後市販シアリスの価格が発表された際には、継続利用する場合に負担がどれくらいになるか、処方とのコスト差も考慮すると良いでしょう。
選べる薬の種類: 現時点で市販化が認められたのはシアリス(タダラフィル)1種類のみです。しかし、ED治療薬には他にもバイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)といった薬や、それらのジェネリック医薬品が存在します。それぞれ効果の持続時間や食事の影響など特徴が異なり、患者さんのライフスタイルや体調に応じて向き不向きがあります。医療機関であれば、これら多数の選択肢の中から最適な薬を医師と相談して選べる利点があります。一方、市販では当面シアリス10mgのみですので、「他の薬の方が自分に合うかもしれない」という可能性は残ります。またシアリスにも、本来ED治療薬として1回毎に服用するスタンダードな用法の他に、毎日低用量を服用するデイリー療法(主に5mg錠を使用)もあります。こうした用法の違いによる治療戦略も、医師の診察なら提案を受けられます。
3. ED治療薬は媚薬ではない – 正しい効果の理解
市販されることで誤解が広がる懸念があるのが、ED治療薬の作用についてです。シアリスに代表されるPDE5阻害薬は、あくまで**「勃起現象を生理的にサポートする薬」**です。性的刺激によって引き起こされる血流増加を促進し、勃起を維持しやすくする効果があります。**決して飲んだだけで急に性欲が高まったり、勝手に勃起したりするものではありません。**いわゆる「催淫剤」「精力剤」といった類の薬ではないことを理解しましょう。
従って、服用しても性的刺激がなければ効果は発現しません。また、性行為のたびに服用する頓用薬であり、飲めばEDが根治するものでもありません(※デイリー療法は別途ありますが効果の本質は同じです)。過度の期待や誤った用途で使用しないよう注意してください。
市販化後もクリニック・オンライン診療を利用するメリット
「薬局で買えるなら、もうクリニックに行く必要はないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、市販薬の登場後も医療機関での診療やオンライン診療には揺るがないメリットがあります。最後に、当院を含め専門クリニックでED診療を受ける利点について整理します。
メリット1:プライバシーが完全に守られる安心感
EDは非常にデリケートな問題です。市販薬を買う際にはどうしても薬剤師との対面で「ED薬が欲しい」と伝えなければなりません。たとえ薬剤師はプロとはいえ、知人に見られないか、他の客に聞こえないかと心理的抵抗を感じる方も多いでしょう。
その点、オンライン診療であれば自宅など人目につかない環境でスマートフォンやPC越しに診察を受けられます。予約から問診・診察、薬の処方・決済まですべてネット上で完結します。処方された薬は中身の分からない梱包で自宅に配送されるため、家族にも知られず治療を開始できます。当院でも専用のスマホアプリを通じてオンライン診療を行っており、全国どこからでも利用可能です。誰にも会わず、知られずにED治療を受けられるのはオンライン診療最大のメリットです。
メリット2:複数の治療薬やジェネリックから選択可能
前述のように市販シアリスは選択肢が限られますが、クリニックなら多様な薬剤から自分に合った治療薬を選べます。例えば、「即効性を重視したいからレビトラ系が良い」「持続時間が短い薬の方が副作用が切れやすくて安心」「できるだけ費用を抑えたいのでジェネリックを使いたい」といった要望に、医師が専門的見地から応えてくれます。
当院・くぼたクリニック松戸五香では、シアリス(タダラフィル)以外にもバイアグラ(シルデナフィル)やそのジェネリック、レビトラ系薬剤を取り扱っており、患者様一人ひとりに適した処方を心掛けています。また、海外で登場した第4のED治療薬「ステンドラ」(有効成分アバナフィル)にも注目しており、国内未承認ではありますが一定の手続きを経て治療選択肢として提供可能な体制を整えています(詳しくは医師にご相談ください)。さらに、シアリスの毎日服用する低用量療法(デイリーシアリス)など、ライフスタイルに合わせた処方提案も行っています。こうした選択肢の幅広さは、専門クリニックで治療を受ける大きなメリットです。
メリット3:医師の専門的な診察とアドバイスが受けられる
薬剤師は薬の専門家ですが、診断や治療全般のプランニングは医師の役割です。オンライン診療であっても必ず医師が診察を行い、問診や必要な情報聴取を経て処方可否の判断をしています。EDの症状のみならず、その背景にある生活習慣の問題、ストレス・メンタルの問題、他の疾患リスクについても、医師であれば総合的にアドバイスできます。
例えば、「最近疲れやすく睡眠も不足していませんか?」「血圧や血糖の検査はしていますか?」といった問いかけを通じて、EDに関連する健康状態の把握や改善策の提案を受けることができます。ED治療薬の正しい使い方はもちろん、「勃起力を維持するための生活習慣」についても専門医の見地から助言が得られるでしょう。単に薬を手に入れるだけでなく、中長期的な健康管理も含めたケアが受けられるのが医療機関で治療する意義です。
まとめ:増えた選択肢の中から、自分に合ったED治療を
国内初のED市販薬となるシアリスの登場は、多くの男性にとって朗報であり、新たな一歩です。市販薬の利点は「手軽さ」にあります。処方箋なしで購入できることで、これまで一歩踏み出せなかった方が治療を始めるきっかけになるでしょう。また偽造薬ではなく品質保証された正規品を入手できる機会が広がる点も大きなメリットです。
しかし一方で、本記事で述べたような注意点も忘れてはなりません。ED治療の選択肢は市販薬、対面診療、オンライン診療と増えました。それぞれにメリット・デメリットがあります。大切なのは、その特徴を正しく理解し、ご自身の体調・価値観・生活環境に照らして最適な方法を選ぶことです。
例えば、「まずは人に会わず試したい」という方には市販薬よりオンライン診療が適しているかもしれません。「費用をできるだけ抑えて長く治療したい」ならジェネリック処方が可能なオンライン/対面診療が良いでしょう。「色々な薬を試してみて効果を比べたい」場合もクリニックで相談するのが安心です。「特に他に病気もないしすぐ試してみたい」という方は市販薬でスタートし、後ほど検査だけ受けに来院する方法もあります。
当院からのメッセージ: くぼたクリニック松戸五香では、泌尿器科専門医によるED診療を行っており、患者様のプライバシーに最大限配慮しながらお悩みに寄り添っています。市販薬もオンライン診療も、どちらも皆様の悩みを解決するための手段です。市販化という新しい選択肢が増えた今こそ、「もう自分だけで悩まなくていい」のだと前向きに捉えてください。EDは特別なことではなく、多くの男性が直面する治療可能な健康問題です。どの方法を選ぶにせよ、決して一人で抱え込まず専門家を頼ることが解決への近道です。
EDに関するご相談やオンライン診療の詳細については、ぜひ当院ホームページをご参照ください。あなたに合った最適な治療法を一緒に見つけ、快適な生活を取り戻すお手伝いをさせていただきます。勇気を出して、一歩踏み出してみましょう。きっと明るい解決策が見つかります。