膀胱炎(おしっこするとき痛い)
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膀胱炎とは?
炎症は、体内に侵入した異物に対して白血球が戦うことで起こります。この炎症が膀胱で起こる場合、それを膀胱炎と呼びます。 膀胱炎の典型的な症状には、排尿時の痛み、頻尿(尿の回数が増える)、残尿感(尿をした後にまだ残っている感覚)などがあります。時々血尿が伴うこともあります。 基本的に、膀胱炎では発熱は起こりません。発熱と膀胱炎の症状がある場合、腎盂腎炎が疑われます。 膀胱炎の種類には、細菌感染によって膀胱で炎症が起こる急性膀胱炎、原因不明の自己免疫反応による間質性膀胱炎、放射線によって膀胱が損傷し炎症が起こる放射性膀胱炎などがあります。 通常、「膀胱炎」と言うと急性膀胱炎を指しますが、稀に他の膀胱炎であることもあるため注意が必要です。これらの種類については、以下で詳しく説明します。
膀胱炎の検査とは?
■尿検査
尿検査は泌尿器科で非常に重要な検査です。尿中の白血球や赤血球の有無、細菌の存在や感染している細菌の種類を確認します。 必要に応じて、尿中の癌細胞の有無も調べます。
■採血検査
通常、膀胱炎では採血は行いませんが、炎症が重度で出血がある場合や貧血が疑われる場合は採血を行うことがあります。 また、膀胱炎の症状に発熱が伴う場合、腎盂腎炎が疑われるため採血を行います。
■超音波検査
膀胱炎の症状(排尿時痛、頻尿、残尿感など)は、尿管結石や膀胱癌でも起こることがあります。そのため、超音波検査で尿管結石や膀胱癌の可能性を確認し、それらがなければ膀胱炎として治療が行われます。 超音波検査は、ゼリーを体に塗布して体内を調べる無痛で身体に優しい検査です。細かい異常の発見には向いていませんが、大きな結石やがんの除外には適した検査です。
■膀胱鏡検査
尿道からカメラを挿入し、膀胱の表面を直接観察することで炎症の有無や炎症の程度など、超音波では確認できない膀胱の表面の異常をチェックします。 当院ではゼリーによる麻酔を使用して行っております。最新の柔らかい軟性膀胱鏡を使用することで、身体への負担は大幅に軽減されます。膀胱癌や膀胱結石の診断にも軟性膀胱鏡は欠かせない検査となります。
膀胱炎の種類とその治療
■急性膀胱炎
急性膀胱炎とは
急性膀胱炎は一般的に膀胱炎と呼ばれるもので、症状が急激に現れるものを指します。若い女性に多く、トイレを我慢したり水分不足が原因で起こります。また、性行為後にも起こることが多いです。急性膀胱炎は出血を伴うこともありますが、その場合は急性出血性膀胱炎という病名になります。治療方法は同じです。男性は尿道が長いため、膀胱炎になりにくいとされています。急性膀胱炎は放置すると腎盂腎炎に発展することがあります。急性膀胱炎の治療
抗生剤を3日~5日間服用します。ほとんどの場合、抗生剤の投与だけで改善します。漢方薬を処方する医師もいます。再発予防のためには、水分を十分に摂取し、排尿を我慢しないことが重要です。■再発性膀胱炎(膀胱炎を繰り返す)
再発性膀胱炎とは
前立腺が肥大すると、尿の出が悪くなり、膀胱の筋肉が過労になります。その結果、膀胱の神経が過敏になり、頻尿が引き起こされます。この状態は、主に50歳以上の男性に多く見られます。前立腺肥大症によって頻尿が起こる場合も、膀胱に尿が少量しか貯められない状態であり、過活動膀胱と同様に蓄尿障害として分類されます。再発性膀胱炎の治療
膀胱炎の症状がある場合、抗生剤を投与します。再発予防のためには、生活習慣を改善することが大切です。治らない場合は、漢方薬を継続的に服用し、体質改善を目指します。複雑性膀胱炎とは?
免疫力の低下や体内異常が原因で膀胱炎が発症することがあります。体内に結石、腫瘍、または体外からの異物があり、細菌が付着しやすくなることで膀胱炎が起こることもあります。このような原因がある膀胱炎を複雑性膀胱炎と言います。それに対して急性膀胱炎は単純性膀胱炎と言われます。複雑性膀胱炎の治療
原因となる異物、結石、腫瘍を取り除く治療と同時に、抗生物質を投与します。免疫力の低下がある場合は、その原因を探り、根本の病気の治療を優先して行います。■間質性膀胱炎
間質性膀胱炎とは
膀胱上皮の壁の中で原因不明の炎症が起こります。これは細菌感染によるものではありません。 膀胱の壁の中で炎症が起こることで痛みが生じ、尿の貯留が困難になるなど、急性膀胱炎と同様の症状が現れます。特徴としては、膀胱の壁の中で炎症が多発しているため、膀胱が拡張しにくくなり、通常200~300ml貯められる尿が100ml以下しか貯められません。膀胱の壁が膨らむことで傷つき、痛みと共に出血が起こります。 尿中には白血球が出てきますが、細菌はほとんど出てこないため、急性膀胱炎の尿検査とは区別できます。また、ハンナー潰瘍という膀胱鏡検査での特徴的所見があります。間質性膀胱炎の治療
水圧拡張術という方法で、膀胱内に多量の水を注入し、膀胱を膨らませて、膀胱壁から出血させ、膀胱の壁を広げる治療が保険適用の主流です。内服薬では抗うつ薬や抗アレルギー薬剤も使われます。
最近では、間質性膀胱炎に対して保険適用のある内服薬が開発されました。
基本的に細菌が原因ではないため、抗生物質は使用しません。この病気に悩む人が非常に多いため、異常を感じたら泌尿器科専門医のもとで適切な治療を受ける必要があります。■放射線性膀胱炎
放射線性膀胱炎とは
前立腺癌や直腸癌など、膀胱の周囲にがんがある場合、そのがんに対して放射線治療を行うと、放射線が膀胱にも影響を与えてしまうことがあります。 放射線が膀胱を攻撃し、炎症を起こして出血したり、頻尿や排尿時の痛みなどの症状を引き起こします。これは超音波検査などでは分からないのですが、膀胱鏡検査で見ると一目瞭然にわかります。 膀胱鏡で放射線性膀胱炎に特徴的な所見は、全体的に膀胱が真っ赤になる状態です。放射線性膀胱炎を疑った場合は、膀胱鏡検査が必須となります。放射線性膀胱炎の治療
ステロイド薬の内服が主な治療方法です。約3ヶ月間内服して様子を見ます。再度膀胱鏡検査を行い、放射線性膀胱炎が改善しているかどうかを確認します。
以上の説明から、膀胱炎はさまざまな原因とタイプがあります。症状が現れた場合は、適切な診断と治療が必要です。泌尿器科専門医に相談し、適切な療を受けることが重要です。早期発見と適切な治療が、症状の改善や再発の防止に繋がります。また、予防策として、水分補給を十分に行い、排尿の習慣を整えることも大切です。
さらに、免疫力を高めるために、バランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動などの健康的な生活習慣を心がけることも、膀胱炎の予防に役立ちます。
膀胱炎は、女性だけでなく男性にも発症します。性別に関係なく、膀胱炎の兆候を感じた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。治療が遅れると、腎盂腎炎などの合併症が起こる可能性がありますので、注意が必要です。診療費用
当院では、すべての診療が保険適用となります。初診の診療費用は、薬代を除いて、おおよそ以下のようになります(3割負担の場合)。・尿検査のみ:約2,000円
・エコー検査のみ:約2,500円
・採血+尿検査:約3,500円
・採血+尿検査+エコー検査:約5,000円
・膀胱鏡検査:約4,000円