前立腺がん

  1. 前立腺がんとは?

    前立腺がんと聞いて、皆さんはどのようなことを想像するでしょうか?一般的には、ゆっくりと進行する癌であり、高齢の男性が罹りやすい癌であると考えられています。また、PSA(前立腺特異抗原)が関係していることも知られています。

    事実、前立腺がんは近年増加しており、お亡くなりになる方も多くなってきています。このページでは、前立腺がんについて詳しく解説していきます。

    前立腺がんの好発年齢(どのような人がかかりやすいのか)

    前立腺がんは、50歳以上になると発症する患者が現れてきます。特に60歳以上の方が主に前立腺がんにかかっています。年齢を増やすほど、前立腺がんの割合は増えます。50歳以下で前立腺がんがある患者はほとんどみられません。

    解剖をした時には、3人に1人が前立腺がんがあったというデータもあります。しかしながら、この方々は前立腺がんだと診断されずに亡くなっています。従って、前立腺がんは患っても、癌であることに気付かない可能性が高い癌であるということです。80歳以上の半数は前立腺がんになっているのではないかとも言われています。

    なぜ前立腺がんが増えている?

    1.高齢化
    日本の高齢化が進むにつれて、前立腺がんをはじめとするがんのリスクが増加しています。前立腺がんは、年齢が上がるほど発症リスクが高まることが知られています。
    2.食生活の欧米化
    本の食生活が欧米化することで、動物性脂肪の摂取量が増加しています。動物性脂肪の多い食事は、前立腺がんのリスクを高めるとされています。
    3.スクリーニングの普及
    前立腺がんの検診が普及してきているため、早期発見が増えることで患者数が増加している可能性があります。
    4.生活習慣の変化
    肥満や運動不足、喫煙などの生活習慣が、前立腺がんのリスクを高めるとされています。近年の生活習慣の変化も、前立腺がんの増加に影響していると考えられます。

    前立腺がんの症状は?

    基本的に前立腺がんの初期段階では無症状です。前立腺肥大症の場合、尿道を構成する内腺が肥大し、排尿痛や頻尿などの排尿障害・蓄尿障害が現れます。しかし、前立腺がんは外腺から発生し、尿道にはほとんど影響を与えません。外腺は尿道に接していないため、がんができても血尿は出にくいです。血尿や排尿障害が現れる場合、前立腺がんがかなり進行していることを意味します。

    前立腺がんが進行すると、膀胱に浸潤して血尿、排尿時の痛み、頻尿、尿の勢いが弱くなるなどの症状が出ます。また、前立腺がんは腰の骨に転移しやすく、腰痛として現れることがあります。

    要するに、前立腺がんは初期(早期)では無症状で、病気が進行すると症状が現れます。ですから、病気が進行する前に早期発見が重要です。

    前立腺がんの検査とは?

    PSA採血
    最も重要な検査はPSA検査です。PSA検査については、PSAのページで詳しく説明されていますが、PSAとは前立腺特異抗原という前立腺に特有な物質です。癌細胞は正常な細胞を破壊し、血液中に漏れ出します。そのため、PSAの値が高くなることがあります。血液中のPSA濃度が4ng/ml以上の場合、前立腺がんの疑いがあります。

    PSA検査は、基本的に健康診断のオプションで行われる検査です。健康診断で必須ではないため、50歳以上の方は検査を受けることをお勧めします。また、親族に前立腺がんの方がいる場合は、40歳以上から検査を受けることが望ましいとされています。

    要するに、前立腺がんは初期(早期)では無症状で、病気が進行すると症状が現れます。ですから、病気が進行する前に早期発見が重要です。
    超音波検査
    前立腺の大きさを確認することが重要です。前立腺が大きい場合、癌でなくてもPSAの値が高くなることがあります。エコー検査を用いて前立腺の大きさを調べ、PSAの値と比較します。また、エコー検査で前立腺の形状を確認し、癌の有無を判断することもあります。
    尿検査
    前立腺がんが進行している場合、尿に血が混じることがありますが、基本的に尿検査は前立腺がんの必須検査ではありません。初診時には、症状が前立腺がんによるものかどうかは分かりません。また、他の異常(感染など)があるかを調べるために、泌尿器科では尿検査を実施することが一般的です。
    MRI検査
    前立腺がんの進行状況を詳細に調べるための検査として、MRI(磁気共鳴画像法)が行われます。この検査では、がんが前立腺内にとどまっているか、外に広がっているか、両側に広がっているか、さらに精嚢にまで達しているかなどを具体的に確認できます。検査時間は約30分で、磁気を利用して画像を撮影します。

    当院では、近隣の提携病院と協力して、当院でMRIの予約が可能です。これにより、患者様の手間が軽減されます。
    前立腺針生検
    もしMRIで前立腺がんが疑われる場合、針生検が行われます。この検査では、肛門に超音波プローブを挿入し、直腸の壁を介して前立腺に針を通します。超音波画像を見ながら、前立腺に12~16本の針を刺し、細胞を採取してがん細胞が含まれているか調べます。

    もし採取された細胞にがん細胞が含まれていなければ、がんの疑いはなくなります。しかし、がん細胞が見つかった場合、顕微鏡を用いてその悪性度を確認します。
    前立腺がんと診断された場合、ステージ(がんの進行度や段階、初期か進行状態か)を決定するために、CT画像、骨シンチ(前立腺がんの骨への転移の有無を調べる検査)、PSA数値、針生検での悪性度をもとに判断し、今後の治療方針を決定します。

    前立腺がんの治療について

    PSA監視療法
    PSA監視療法は、前立腺がんに特徴的な治療法であり、他のがんには見られません。前立腺がんが長寿命のがんであるとされる理由の一つでもあります。このPSA監視療法では、実際に治療を行うのではなく、PSA値の監視が主な目的です。PSA値は、前立腺がんの進行状況を反映しているためです。

    PSA値が変わらない場合、前立腺がんが増殖・進行していないと判断されます。3ヶ月ごとに採血でPSA値の上昇を確認し、上昇していなければ体に悪影響を及ぼすがんではないと判断され、積極的な治療は行われません。もしPSA値が上昇し続ける場合、針生検などを行い、治療へと移行します。
    ホルモン療法(内分泌療法)
    ホルモン治療は前立腺がんに特徴的な治療法です。前立腺がんは男性ホルモンに依存して成長するため、薬を用いて男性ホルモンを抑制することで、がんの進行を抑えることができます。がんの進行が抑えられると、PSA値も低下します。ホルモン投与後、PSA値を確認してがんの状態を把握します。

    治療中にPSA値が上昇した場合、そのホルモン薬が効かなくなったと判断し、ホルモン薬を変更します。ホルモン治療は放射線治療や手術療法と併用されることがあります。また、手術が困難な80歳以上の高齢者には、ホルモン治療だけが用いられることもあります。

    ホルモン治療は根治治療ではなく、前立腺がんを除去するのではなく、進行を抑制することを目的としています。ホルモン治療は、PSA値を大幅に低下させ、前立腺がんに対して非常に効果的です。
    放射線療法
    放射線治療は、前立腺に放射線を照射してがん細胞を破壊する治療法です。以前の放射線治療は、正常な細胞も破壊してしまい、勃起障害、膀胱直腸障害、皮膚障害などの副作用が起こることがありました。しかし、最近の放射線治療は精度が向上し、前立腺周囲の臓器に放射線をあてずに治療できるようになってきています。

    また、費用が高額になりますが、先進医療の重粒子線治療は、正常な細胞へのダメージを最小限に抑えながら、がん細胞だけを攻撃することができます。重粒子線治療は効果が高く、副作用も少ないとされています。
    手術療法
    1.開腹手術

    2010年頃まで、この手術が一般的でした。下腹部を10cmほど切開して行います。出血量が多く、傷が大きく、術後の回復に時間がかかる特徴があります。また、尿失禁の合併症が発生する割合が高いと言われています。出血量は多い人で3リットル前後になります。男性の骨盤が狭く、前立腺が骨盤の中にあるため、開腹手術では手術操作が難しく、出血によって視野が狭くなります。現在は腹腔鏡手術やロボット支援下手術が主流となっています。

    2.腹腔鏡手術

    開腹手術に比べて出血量が少なく、術後の回復も早く、尿失禁の合併症も少ないです。お腹の中に二酸化炭素を送り込み、その圧力で出血を抑えるため、出血量が100cc以下になります。この手術は医師の技術が必要で、習得に時間がかかります。

    3.ロボット支援下手術

    新しい保険適用の手術で、腹腔鏡手術と同様に出血量を抑え、術後の回復が早く、尿失禁などの合併症も少ないです。腹腔鏡手術に比べて医師が技術を比較的簡単に習得できます。特徴として、医師は別の場所で画像を見ながら手術を行います。私も前職千葉西総合病院で多数のロボット手術を経験しました。セカンドオピニオンも可能なのでお気軽にご相談ください。ビデオ画像さえ見られれば、将来的には海外でも遠隔操作が可能な手術です。

    前立腺がんかもしれない(PSAが高い)と言われたらどうする?

    泌尿器科を受診し、超音波や採血などの検査を行いましょう。泌尿器科専門医が在籍する病院やクリニックで適切なアドバイスを受けることが重要です。PSA値が高いと指摘されたり、泌尿器に関する気になることがある場合は、遠慮なく当院の泌尿器科医師にご相談ください。

    診療費用について

    当院では、保険診療を全て取り扱っています。初診の診療費用は、薬代を除いておおよそ以下の通りです(3割負担の場合)。

    ・尿検査のみ:約2,000円
    ・エコー検査のみ:約2,500円
    ・採血+尿検査:約3,500円
    ・採血+尿検査+エコー検査:約5,000円

    当院は泌尿器科専門医が在籍し、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しているクリニックです。老若男女問わず、気軽に受診できる環境を提供しています。 泌尿器科の疾患でお悩みの方は、ぜひお気軽にくぼたクリニック松戸五香へご受診ください。