前立腺肥大症
(男性のおしっこが近い、おしっこが出にくい)

  1. 前立腺肥大症(おしっこが近い、おしっこが出にくい)
    前立腺肥大症と聞くと、尿が出にくくなる、尿の回数が増える、おじさんの病気などのことを想像するかもしれません。今回は、男 性特有の病気である前立腺肥大症について、できるだけ分かりやすく説明しようと思います。

    前立腺肥大症とは?

    前立腺肥大症は、主に中高年の男性に多く見られる症状です。前立腺は男性の生殖器の一部で、尿道を取り囲むように存在し、精液の成分を作る役割があります。加齢とともに前立腺が大きくなることが一般的で、これによって尿道が圧迫されることがあります。

    この圧迫によって、尿が出にくくなったり、尿の回数が増えたり、夜中にトイレに何度も起きることがあるのです。これらの症状は、日常生活に支障をきたすことがあります。

    前立腺肥大症の治療法には、薬物療法や手術療法があります。薬物療法は、前立腺の大きさを縮小させることで症状を改善させるものです。一方、手術療法は、前立腺の一部を切除することで尿道の圧迫を解消し、症状を緩和させるものです。

    男性の健康に関心を持ち、定期的に医療機関で検査を受けることが、前立腺肥大症の早期発見や予防に役立ちます。

    そもそも前立腺とは?

    前立腺は、図のように尿道の一部に位置し、前立腺液という成分を生成しています。前立腺液は精液の一部を構成し、精液は精子以外にも前立腺液や精嚢液でできています。前立腺液と精嚢液は、精子がスムーズに動くための潤滑の役割を果たしています。前立腺は前立腺液を生成するという役割を持ちますが、加齢とともに前立腺肥大症や前立腺癌を引き起こす可能性があるため、基本的には体に悪影響を及ぼす可能性のある厄介な臓器であると考えられます。

    前立腺肥大症とは?

    ■前立腺の肥大する場所は?

    図に示されているように、前立腺は尿道の一部を構成しており、その中でも「内腺」と呼ばれる部分が肥大することがあります。前立腺の内腺が大きくなると、尿道を圧迫し、尿が出にくくなることが起こります。一方で、「外腺」という部分は、基本的に肥大することはありません。

    ■前立腺がんとの違いは?

    前立腺がんは、図に示されているように、外腺から発生します。外腺は直接尿道に接していないため、初期の前立腺がんでは尿道を圧迫しにくく、排尿障害や頻尿といった症状はほとんど現れません。ただし、前立腺がんが大きく進行すると、癌が尿道を圧迫し始め、排尿障害や頻尿などの症状が現れることがあります。

    ■前立腺肥大症の症状について
    ・尿の勢いが弱い

    前述の通り、前立腺肥大が原因で尿道が圧迫されると、尿の勢いが弱まり、尿が出にくくなります。これは前立腺肥大症の比較的初期の症状です。最近、尿が出にくくなってきたと感じる場合、前立腺肥大症の初期症状の可能性があります。

    ・何回もトイレに行く(頻尿)

    尿の勢いが弱まると、細くなった尿道に膀胱が一生懸命尿を通そうと努力します。その結果、膀胱の筋肉が太くなり、膀胱の神経が過敏になってしまいます。そのため、少量の尿が溜まるだけで尿意を感じるようになります。さらに、前立腺肥大がある場合、前立腺が膀胱を物理的に圧迫し刺激することで、頻尿になることもあります。これら2つの要因が重なって、頻尿が起こります。頻尿は前立腺肥大症の初期症状ではなく、尿の勢いが弱まった後に現れる症状です。

    ・尿が全く出なくなる(尿閉)

    尿道がどんどん狭くなり、尿が出にくくなる状態が極端に進むと、尿道が完全に閉じてしまい、尿閉という状態に陥ります。症状は尿勢不良→頻尿→尿閉の順番で進行します。尿閉は末期の症状で、最初に尿の出が悪くなり、頻尿になり、そのまま放置すると尿閉になることがあります。ですから、尿閉になる前に、尿の出が悪い、頻尿などの症状に気付いたら、泌尿器科を受診することが重要です。

    尿閉になると、膀胱の筋肉が疲弊してしまいます。膀胱の筋肉は一度ダメージを受けると回復が難しく、手術や薬による治療でも元に戻らない可能性が高まります。尿閉になった際には、通常300ml程度しか溜まらない膀胱がパンパンに膨らみ、1000ml以上の尿が蓄積することも珍しくありません。尿閉の患者は下腹部が膨らみ、非常に苦しい状態が続きます。その場合、カテーテル(尿道に挿入する管)を使って尿を抜かなければなりません。その後、内服治療の効果が現れるか、手術が行われるまで、カテーテルを継続して使用することになります。

    尿閉は、もともと尿の出が悪い方で、アルコールや風邪薬の摂取がきっかけとなって発生することが多いです。アルコールや風邪薬の成分が尿道を締める作用があるため、尿閉を引き起こす可能性があります。

    前立腺肥大症の検査とは?

    ■尿検査

    尿検査では、尿中に細菌、白血球、赤血球が存在するかどうかを調べます。前立腺肥大症の診断において、尿検査は必ずしも必要ではありませんが、前立腺肥大症かどうかを確認するための鑑別診断には役立ちます。そのため、泌尿器科では尿検査が重要な検査の一つとなります。

    ■超音波検査

    前立腺肥大症の際には、前立腺の大きさを測定し、癌の有無も確認します。超音波検査は、痛みがなく、被曝もないため、患者さんにとって身体への負担が少ない検査方法です。

    ■血液検査

    採血検査では、腎臓の機能が低下していないかを確認し、前立腺癌の有無をPSA検査で調べます。進行した前立腺がんでも尿道を圧迫することがあり、前立腺肥大症による症状との判別が必要なため、採血検査が実施されます。

    ■尿流量動態検査

    尿の勢いを測定します。患者さんにトイレで尿をしてもらい、1秒間にどれだけの尿が出るかを計測して尿の勢いを判断します。尿の勢いが分かることで、前立腺肥大症かどうかの診断が可能になります。当院ではこの検査方法を採用しています。

    前立腺肥大症の治療とは?

    ■内服治療

    前立腺肥大症の治療は、基本的に内服治療が第一選択です。尿の勢いが弱くなっている場合や頻尿がある場合、最初にα1ブロッカーやPDE5阻害剤という種類の薬を服用していただきます。それでも症状が改善しない場合、別の薬を追加したり、複数の薬を調整しながら効果を高めていきます。

    ただし、前立腺肥大症があるからといって、必ず薬を服用しなければならないわけではありません。尿の勢いが悪かったり、頻尿などの排尿障害・蓄尿障害がある場合、患者の生活の質が低下するため、内服治療が推奨されます。また、将来的な尿のトラブルを防ぐための予防措置でもあります。50歳以上のほとんどの男性が前立腺肥大症を持っていますが、すべての人が薬を飲まなければならないわけではありません。毎日薬を飲むことで生活の質が低下する方もいるため、前立腺肥大症による症状の程度を考慮し、医師が治療方針を決定します。個人で判断するのは難しいので、前立腺肥大症に伴う症状がある場合は、早めに泌尿器科の専門医に相談しましょう。

    ■手術療法

    内服治療が効果がない場合に、手術治療に移行することがあります。ただし、手術治療への移行は、泌尿器科専門医の判断が必要です。通常、内服治療を行わずに手術治療に直接進むことはほとんどありません。ただし、尿閉が起きている患者さんの場合、内服治療を行わずに手術治療を選択することがあります。

    ・内視鏡治療

    最も一般的な治療法は内視鏡治療です。内視鏡治療では、尿道からカメラを挿入し、前立腺を切除するか、レーザーで蒸発させる方法があります。内視鏡治療の特徴は、全身麻酔または腰椎麻酔を用いて行うため、皮膚を切らないので体へのダメージが非常に小さいです。最近の手術方法の進歩により、身体へのダメージが少なく、1~2泊の入院で退院できることもあります。また、麻酔の種類によっては、日帰り手術が可能な施設もあります。前立腺肥大症に対する内視鏡手術の合併症としては、尿漏れがあります。これは手術者の技術力に依存するため、技術が未熟な手術者の場合、尿漏れの合併症が発生する可能性が高くなります。

    ・開腹手術

    この手術では、下腹部を約5センチ切開し、膀胱を通して直接前立腺を切除します。手術技術が難しく、出血量が多いことが特徴です。この方法は昔の治療法であり、最近ではあまり行われていない施設もありますが、前立腺が非常に大きい場合にはこの治療が適しています。なぜなら、前立腺肥大が非常に大きい場合、内視鏡手術では手術時間が長くなり、患者への負担が大きくなるためです。開腹手術では、前立腺が大きくても手術時間にほとんど差はありません。

    前立腺肥大症の治療費用

    ・初診の診療費用は、薬代を除いておおよそ以下のようになります(3割負担の場合)。

    ・尿検査のみ:約2,000円

    ・エコー検査のみ:約2,500円

    ・採血+尿検査:約3,500円

    ・採血+尿検査+エコー検査:約5,000円

    当院は泌尿器科専門医が在籍している保険診療を行っているクリニックで、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しています。老若男女が気軽に受診できる環境を整えております。泌尿器科の疾患でお悩みの方は、ぜひお気軽にくぼたクリニック松戸五香までご相談ください。